生 物 水 文 気 候 部 門 北海道水文気候研究所
釧 路 湿 原
`湿原の局地気候と水文気象特性


   
  釧路の気候     
 
  釧路は北海道太平洋岸気候区(高橋、1988)に属し、6月から8月にかけて
太平洋岸から侵入する海務により日射がさえぎられ気温の上昇が抑制され
ところにその特徴がある(図-1)。霧の発生侵入頻度は7月が19.3日で最も多
く、次いで6月の17.3日、8月の17.0日となっている(札幌管区気象台、1992)。
それに伴い日照率は低下し8月には25%まで下がる。年平均気温は5.7℃で
全国80ヶ所の気象官署の中で最も低く、最暖月の気温1.8℃も根室に次いで
2番目に低い。冬季には石狩山地を越えた北西風が卓越するため降雪が少
なく最深積雪深の平年値は1、2月に28㎝である。気温は低く、最寒月1月の
気温-6.1℃は同じ緯度で日本海岸にある寿都よりも3℃以上も低温である。

 平年の降霜初日は10月11日、降霜終日は5月8日で無霜期間は155日であ
る。平年の降雪初日は11月11日、降雪終日は4月27日であるが、長期積雪
は12月30日から3月14日までの75日間である。平年値で日平均気温が0℃を
超える初日は3月27日、0℃以下となる初日は12月7日である。その間の積算
気温は2,589℃で非常に少
ない。
 
  釧路湿原の気候    
     釧路湿原は大楽毛から旧釧路川河口付近に至る高さ 5 m ほどの浜堤 を隔
てて太平 洋に接し 釧路川本流に沿って北北東に内陸約 35 km まで及んでい
る。その中央部分では西側から釧路川に合流する恩根内川や雪理川が湿原
内を蛇行しながら貫流し,北からは久著呂川が釧路川に沿って南北に貫流し
ている。
 湿原の中央部分の幅は西の恩根内から東の達古武沼に至る21km で自然
度の高い湿原が広がっている。このように広大な釧路湿原では場所により気
候条件がかなり異なってくる。とくに海岸から内陸方向 への温度の傾斜はは
なはだし く,図 2 に示した海岸に近い釧路地方気象台から35km内陸の標茶ま
での気温分布は図3のごとくとなる。


 
   冬季 (1, 2 月)の日最低気温は海岸からキラコタン岬まで直線的に低下しその温度差は6℃近くに達する。このことは冬季に凍結しない海の
影響で低温な内陸との間の海 陸風循環が海岸から9kmのサケマス捕獲場 まで及んでいることを示している。その最低気温の傾向を反映し
て日平均気温もキラコタン岬の付近が海岸よりも 3℃低温となっている。一方,夏季(7, 8 月)の日最低気温は海の影響をほとんど受けていな
いが,日最高気温は温度の低い海の影響と海岸から侵入する海霧の影響を受け,内陸に向かうにつれて上昇している。その影轡はコッタロ
湿原付近まで及んでいるといえる。